動物看護師は、家庭動物を看護する専門技術者として、動物医療の発展とともに生まれました。現時点では、ヒトの医療における看護師のように、法令に基づいて与えられる資格呼称ではありません。日本の動物看護師は民間資格ですが、全国のペットなど小動物医療を対象とした動物病院を中心に、約2万人が働いています。
日本動物看護学会の実施した動物看護師資格認定試験の過去7回の(第7回認定試験:2008年3月実施)までの動物看護師資格合格者総数は1605名です。2009年4月には、動物看護師の職能団体である「日本動物看護職協会」が発足しました。
動物看護とは、「動物の生命および体力を守り、生活環境を整え日常生活への適応を援助し、早期に活動できるように支援すること」、「不幸にして死に臨む場合には平和な死への援助」と定義づけられます。
家庭動物の健康が、動物医療および動物看護の専門家による援助を必要とする時は
- さまざまな症状や障害を示す疾病
- 病気の予防や健康維持・増進に関わる問題
- 繁殖、出産、および加齢に関わる問題
などが生じた時です。犬・猫・エキゾチック動物を中心として多様な対象動物を直接的に援助するのみならず、飼育者に対しても管理・教育など指導やサポートを中心とした看護支援をしていくことも動物看護の重要な役割です。
動物看護の対象動物は、動物医療が必要とされるすべての領域(野生動物、家畜、実験動物、展示動物、学校飼育動物、ペット・伴侶動物などの家庭動物)を想定しています。
米国では、動物看護師(VT:Veterinary Technician, 直訳は「獣医技術士」ですが、日本では「動物看護師」と呼称しています)の資格認定は各州の法令に基づき、州獣医事委員会によって行われています。
米国獣医師会(AVMA:the American Veterinary Medical Association)が認定した動物看護学の2年制の教育カリキュラムがあり、ほとんどの州ではAVMAの過程を修了した後、動物看護師全国試験(VTNE:Veterinary Technician National Examination)を受験し認定を受けたVTの業務内容等については、米国における獣医師の資格制度とほぼ同様で、州ごとの法令に委ねられています。
表1 各州の獣医事関係法令に規定されているVTの具体的業務
- 臨床検査(尿検査、血液検査、血液生化学検査など)
- 採血
- 抜歯
- 生検
- 医療機器を用いた各種検査(心電図・X線撮影など)
以上が基本であるが、加えて
- 問診やカルテ記載
- 特殊な看護
- 飼い主に対する病態の説明
- 治療方針などの説明
- 麻酔
- 皮膚の縫合
- 外副子固定
等を規定している州もある。
(参照:細井戸大成ほか「米国における動物看護職制度」『日本獣医師会雑誌』No12, 2008年)
英国では、英国獣医師協会(RCVS:the Royal College of Veterinary Surgeons)に認可された2年間の実習コース(ATP:Approved Training Practice)があり、この間に獣医看護(Veterinary Nursing)における「職業能力評価制度(National Vocational Qualification)」の資格を取得します。ATPに定められた全ての試験に合格すると英国獣医師協会認定の動物看護師として登録され、自分の名前の後に「獣医看護師(VN:Veterinary Nurse)」の称号を付すことが許されます。
診療の現場で様々な処置を行えるのは、RCVSによって認定されたVNだけですが「体腔(body cavity)には触れないこと)」、「獣医師の監督下にあること」といった条件があります。
表2 英国獣医師協会認定の獣医看護師が行うことのできる処置
- 採血
- 静脈カテーテルの挿入(頸静脈を含む)
- 乳腺腫瘍切除
- 歯科治療(抜歯は許可されない)
- 傷口の手当て(縫合を含む)
- X線撮影
- 包帯装着
- その他、獣医師の管理下で行えると判断された処置
(ただし、犬猫の去勢・避妊手術はできない)
さらに現在では、英国獣医看護師協会(British Veterinary Nurse Association)が独自に、@歯科、A動物行動学、B馬の看護、C薬学の4分野の資格認定を行っています。
(参照:ジョー・スコット「英国における動物看護師の実情」『日本動物看護学会会誌』第9巻、1号)